顫
顫
名詞
標準
文例 · 用例
母も夜時々眼をさましてみると、民子はいつでも、すくすく泣いている声がしていたというので、今度は母が非常に立腹して、お増と民子と二人呼んで母が顫声になって云うには、「相対では私がどんな我儘なことを云うかも知れないからお増は聞人になってくれ。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
千万年も、古びた夜の空気を顫はし、除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
— 亡き児文也の霊に捧ぐ 『在りし日の歌』 青空文庫
その塀に沿つた、紙や泡のヒヨロヒヨロと顫へてゐるドブは、それを見ながら歩くことが嫌ではなかつた。
— 中原中也 『亡弟』 青空文庫
ラフォルグ御自身はコルビエールを悉く了得する程に顫動的ではなかつた。
— 中原中也 『トリスタン・コルビエールを紹介す』 青空文庫
私たちは、互に、言語もなく、眼と眼とを見合せて、すさまじい荒廃の姿に顫えた。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
朱樺の火は燃え出した、その明るくなることは、花が発くのと同じで、万象の色が真の瞬間に改まる、槍と穂高と、兀々した巉岩が、先ず浄い天火に洗われて容を改めた、自分の踏んでいる脚の下の石楠花や偃松や、白樺の稚いのが、今眠から醒めたというように朝風に身振いしてソヨソヨと顫った、天地皆新しい。
— 小島烏水 『奥常念岳の絶巓に立つ記』 青空文庫
それは人々の耳を打ち、足を顫わせた。
— ――生きる為に―― 『山谿に生くる人々』 青空文庫
重そうにうなだれた花が、ゆすぶられる度毎に、みんなあたまを顫わせた。
— 太宰治 『葉』 青空文庫