諸殿
しょでん
名詞
標準
文例 · 用例
かねて長州方ではこの事のあるのを予期してか、あるいは江戸を見捨てるの意味よりか、先年諸大名の家族が江戸屋敷から解放されて国勝手の命令が出たおりに、日比谷にある長州の上屋敷では表奥の諸殿を取り払ったから、打ち壊されたのは四方の長屋のみであった。
— 第一部下 『夜明け前』 青空文庫
呼子の市街を纏へる阜の半腹には、愛宕、天満、権現、八幡などの諸殿堂、その他二三の寺院は緑樹のあひだに連り、かしこに朱の欄干はその半勾をほのめかし、ここに苔しろき石燈はその数段をあらはし、全景のうへより見たるところ、おのづから一|幀の絵画を披くに似て、いともうるはし。
— 蒲原有明 『松浦あがた』 青空文庫
パウロは山頂の石壇に上り、アクロポリスの諸殿堂と相対して立った。
— 和辻哲郎 『『偶像再興』序言』 青空文庫
雪の御所内は諸殿の灯を遠方此方にちりばめて神々しいばかりである。
— 建武らくがき帖 『私本太平記』 青空文庫
なのに明治天皇のお座所を中心とする諸殿だけは、宮内省やほかの官衙がすべて電燈化されても『電気にしていい』というお許しがないのだった。
— 吉川英治 『美しい日本の歴史』 青空文庫
それは陛下のお座所から諸殿の廊下にまでともされる毎晩の百目蝋燭は一本百匁以上もある大きな物であり数も相当な消費になるが、やがて陛下がご寝所にお入りになると、むかしで言う舎人のような下級宮内官吏が、蝋燭バサミと黒塗りの鑵のような物を提げて、その一本一本のとぼし残りをふッと吹いては鑵に入れて消して廻る。
— 吉川英治 『美しい日本の歴史』 青空文庫