温顔
おんがん
名詞
標準
kindly face
文例 · 用例
ゆき短な右の手に、畳んだままの扇を取って、温顔に微笑を含み、動ぎ出でつ、ともなく客僧の前へのっしと坐ると、気に圧された僧は、ひしと茶斑の大牛に引敷かれたる心地がした。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
院主(出資者)の訓辞、かの説教強盗のそれより、少し声やさしく、温顔なるのみ。
— 太宰治 『HUMAN LOST』 青空文庫
船長はいかにも穏かな温顔の人で、先ずは無口に近い。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
温顔の、それでいて重厚な犯し難い風采である。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
けたたましい動物の叫びと共に眼を瞋らして跳び込んで来た青年と、圜冠句履緩く※を帯びて几に凭った温顔の孔子との間に、問答が始まる。
— 中島敦 『弟子』 青空文庫
警部の温顔俄に厳めしうなりて、この者をも拘引せよと犇くに、巡査は承りてともかくも警察に来るべし、寒くなきよう支度せよなどなお情けらしう注意するなりき。
— 福田英子 『妾の半生涯』 青空文庫
」 その能く用ゐる微笑を弄して、直行は巧に温顔を作れるなり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
」と、忠直卿は温顔をもってこういわれた。
— 菊池寛 『忠直卿行状記』 青空文庫