焼け残り
やけのこり
名詞
標準
文例 · 用例
私はいま、自分の創作年表とでも称すべき焼け残りの薄汚い手帳のペエジを繰りながら、さまざまの回想にふける。
— 太宰治 『十五年間』 青空文庫
屋敷の焼け残りの部分を母家に直し、整理して残った田畑に小作を入れゝば留守の暮しは立った。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
半分こげたり、びしょびしょにぬれたりした焼け残りの荷物といっしょに、ぼくたち六人は小さな離れでくらすことになった。
— 有島武郎 『火事とポチ』 青空文庫
家は五十一のとき隼町に移り、翌年火災に遭って、焼け残りの土蔵や建具を売り払って番町に移り、五十九のとき麹町善国寺谷に移った。
— 森鴎外 『安井夫人』 青空文庫
それに、発砲を禁じられとったんで、ただ土くれや唐黍の焼け残りをたよりに、弾丸を避けながら進んで行たんやが、僕が黍の根を引き起し、それを堤としてからだを横たえた時、まア、安心と思たんが悪かったんであろ、速射砲弾の破裂に何ともかとも云えん恐ろしさを感じた。
— 岩野泡鳴 『戦話』 青空文庫
のみならず、焼け残りの部分が様々な恰好で、焦土の所々に黄色く残っているところは、ちょうど焼死体の腐爛した皮膚を見るようで、薄気味悪く思われるのだった。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
そして、往路の歩線は建物に沿うているが、復路には造園倉庫まで直線に行こうとしたものらしく、七、八歩進んで焼け残りの枯芝の手前まで来ると、幅三尺ほどにすぎない帯状のそれを、跨ぎ越えた形跡を残している。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
獲物をあさり疲れた兄弟は、この城址へ蹈み込んで狐や狸の穴を探していると、冬の空はいよいよ暗くなって、大きい霰が音を立ててさっと降り出して来たので、二人もさすがにうろたえて、一時のかくれ家を求めるために、焼け残りの本丸へ逃げ込んだ。
— 岡本綺堂 『小坂部姫』 青空文庫