雪塗れ
ゆきまみれ
名詞
標準
文例 · 用例
頭からすっぽりと頭巾のついた黒っぽい外套を着て、雪まみれになって、口から白い息をむらむらと吐き出すその姿は、実際人間という感じを起こさせないほどだった。
— 有島武郎 『生まれいずる悩み』 青空文庫
彼女のはいって行った三等車の乗客達は、雪まみれの外套に身を包んだ彼女の只ならぬ様子を見ると、揃って彼女の方をじろじろ無遠慮に見出した。
— 堀辰雄 『菜穂子』 青空文庫
彼女は今まで自分が何か非常な決心をしているつもりになっていたが、いま夫とこうして差向いになって話し出していると、何だって山の療養所からこんなに雪まみれになって抜け出して来たのか分からなくなり出していた。
— 堀辰雄 『菜穂子』 青空文庫
お父さんは雪まみれになって呶鳴った――「笑う人がありますか、スキーは三千遍ころばなくっちゃ上手になれないのだ。
— 石川欣一 『山を思う』 青空文庫
猛烈な吹雪で屋根も飛びそうな最中、突然戸があいて、雪まみれの男がよろめき入った。
— 石川欣一 『山を思う』 青空文庫
家内では鼠も鳴かず、屋根では雪も滑らぬ四時過ぎ、雪まみれになった二つの姿が対山館の前まで辿り着いたのを知っている人は誰もなかった。
— 石川欣一 『山を思う』 青空文庫
家内ではねずみも鳴かず、屋根では雪もすべらぬ四時過ぎ、雪まみれになった二つのフィギュアが対山館の前までたどり着いたのを知っている人はだれもなかった。
— 石川欣一 『針の木のいけにえ』 青空文庫
眠れずにいた弥之助が出てゆくと、お八重が雪まみれになった笠や蓑を脱いでいた。
— 山本周五郎 『蜆谷』 青空文庫