旧様
きゅうよう
名詞
標準
文例 · 用例
月光を線に延ばして奇怪な形に編み上げたようなアームチェーアや現代機械の臓腑の模型がグロテスクな物体となって睥睨し嘲笑し、旧様式美に対する新様式の反逆を直截簡明に宣言している一群の進撃隊のようだ。
— 岡本かの子 『バットクラス』 青空文庫
故にいくら旧様を守ろうとしても、全然|旧には復らない。
— 夏目漱石 『無題』 青空文庫
その中に吾が頭山満翁は超然として、一依旧様、金銭、名誉なんどは勿論の事、持って生れた忠君愛国の一念以外のものは、数限りもない乾分、崇拝者、又は頭山満の沽券と雖も、往来の古|草鞋ぐらいにしか考えていないらしい。
— 夢野久作 『近世快人伝』 青空文庫
一依旧様、権門に媚びず、時世に諛らず、喰えなければ喰えないままで、乞食以下の生活に甘んじ、喰う物が無くなっても人に頭を下げない。
— 夢野久作 『近世快人伝』 青空文庫
度々の申し合せで、其改良を企てゝも、やはり不便な旧様式の方に綟りを戻しがちなのは、其中から「美」を感じようとする近世風よりは、更に古く、ある「善」――尠くとも旧文化の勢力の残つた郷党生活では――を認めてゐるからである。
— 常世の国 『古代生活の研究』 青空文庫
たゞ地方の人の故郷観に比べて「羨望」の情ともいへるものゝあることは、よく地方の人が故郷を談じて、鎮守の森といひ、裏の瀬戸といふやうな話をし、山容、水の流れ、一草一木について語るのを聞く度に、例外はあるにもせよ、大抵その旧物は故郷の山河に依然として旧様をとゞめてゐる模様である。
— 木村荘八 『両国界隈』 青空文庫
これに比べると人間は旧弊なもので、せっかくの鼠捕り器械と薬品、もしくは持って来い引取ろうという警察令が出ているにもかかわらず、今なお鼠を殺すと埃溜めの中へ、持って行くだけの改良法も採用せず、依然として百年以前の旧様式を墨守し、これを表通りの街路の上にほうり出して、車の輪の蹂躙に委ねている。
— 野鳥雑記 『野草雑記・野鳥雑記』 青空文庫