埋み火
うずみび
名詞
標準
banked fire
文例 · 用例
寂しさを増したため却つて埋み火のやうに心の奥へ封じ込められてゐた情感がうづいて、何等かのあたたかみを求めるのであつた。
— 岡本かの子 『小町の芍薬』 青空文庫
おちかは火鉢の側に來て坐り、埋み火を起しなぞしてゐた。
— 島木健作 『第一義の道』 青空文庫
今の雪風に煽られたのか、炉の埋み火が燃え上がった。
— 国枝史郎 『名人地獄』 青空文庫
まア一服なすって」 お島は家へ取って返して、平次とガラッ八のために、埋み火を起して、お茶の用意をしました。
— 八人芸の女 『銭形平次捕物控』 青空文庫
「お気の毒だね、――ところで、誰がいったい佐渡屋を皆殺しにする気になるだろう」「わかりませんよ、親分」 平次が帳場格子の前にしゃがむと、品吉は埋み火の煙草盆を押しやって、自分も真鍮の煙管を取上げました。
— 鬼の面 『銭形平次捕物控』 青空文庫
生理的には肉体の完成に忙しく、そして精神的には他愛もない遊びと此頃の人らしい勉強に紛れて、暫くは天狗長兵衛作の観音様も、綾麿の記憶の下積になって、僅かに埋み火のように息づいていたのでしょう。
— 観音様の頬 『奇談クラブ〔戦後版〕』 青空文庫
その埋み火が、新に薪を添えられて、燃えさかる情熱となったのは、綾麿が十七の年、声変りがして、鼻の下が薄黒くなって、理性と情慾と、信仰と迷信と、渦を巻いて五体を駈けめぐり始める頃でした。
— 観音様の頬 『奇談クラブ〔戦後版〕』 青空文庫
こう冷たく頑なに思い込んで来た旗岡巡査は、突然、十数年の埋み火を掻き立てられるように、瞼を赤くし、今にも声をあげて泣くかのように顔の筋をぶるぶると吊った。
— 吉川英治 『旗岡巡査』 青空文庫
作例 · 標準
例句