彎
彎
名詞
標準
文例 · 用例
「いき」な建築は円窓と半月窓とを許し、また床柱の曲線と下地窓の竹に纏う藤蔓の彎曲とを咎めない。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
今度はまた川になる、川の面は、呼吸も吐かず静まりかえっているように見えるが、足を入れると、それこそ疾風が液体になったように全速力で走っている、流れの浅く、彎入した、緩やかなところに背を露わした石がある、苔が厚く活物の緑が蠢めいている、水草の動くのは、髪の毛がピシピシと流電に逆立つようだ。
— 小島烏水 『梓川の上流』 青空文庫
トラホームだの頸腺腫だのX彎曲だの、というくだりは、あなたに、いい、といわれたばかりに、どこへでも持って歩いていたのです。
— 太宰治 『虚構の春』 青空文庫
風の影響もあるだろうが、それよりもむしろ、筒口を出る際の、偶然の些細な条件のために、時々は弾道が上の方でひどく彎曲して、とんでもない方へ行って開く事もある。
— 寺田寅彦 『雑記(2)』 青空文庫
市中の地下鉄と違って線路が無暗に彎曲しているようである。
— 寺田寅彦 『猫の穴掘り』 青空文庫
谷中の台地から田端の谷へ面した傾斜地の中腹に沿う彎曲した小路をはいって行って左側に、小さな荒物屋だか、駄菓子屋だかがあって、そこの二階が当時の氏の仮寓になっていた。
— 寺田寅彦 『中村彝氏の追憶』 青空文庫
かかる群集の動揺む下に、冷然たる線路は、日脚に薄暗く沈んで、いまに鯊が釣れるから待て、と大都市の泥海に、入江のごとく彎曲しつつ、伸々と静まり返って、その癖|底光のする歯の土手を見せて、冷笑う。
— 泉鏡花 『売色鴨南蛮』 青空文庫
花瓶のほうをよく見ていると手づくねの筒形の胴の表面の彎曲、釉薬の自然な斑模様、そういったもののきわめて複雑な変化の中に、いかにも世の中の苦労という苦労を舐め尽くして来たかのような、しかもいかにも女らしい一種の心ばえのようなものがありありと読みとられるようである。
— 寺田寅彦 『柿の種』 青空文庫