買い溜め
かいだめ
名詞
標準
文例 · 用例
でも、買い溜めは、あさましくて、いやだ。
— 太宰治 『十二月八日』 青空文庫
代診を雇ってやらせていた医院が、買い溜めの高価な薬品や機械や材料といっしょに空襲で焼けてしまったり、預金が封鎖されたりして、到頭友達と共同で喫茶店をひらくようになってからも、陰気に蘆屋の家に閉じこもって夫のことを考えている日が多かった。
— 織田作之助 『土曜夫人』 青空文庫
身の廻りのもの一切、冬の着物、夜具、買い溜めていた靴、帽子のたぐいまで、持って行くことにしてチッキにして、劇団への挨拶、友人との別れ、町会への異動申告、みんな一人で半日かけずり廻って済ませ、信吉と汽車の中で食べる弁当まで自分の手で作って、駅へかけつけた。
— 織田作之助 『夜の構図』 青空文庫
この前の戦争で狡い奴らに先を越されて損をしたが、今度はチャンと要領を覚えたから、今度戦争になってみろ、買い溜め、売り惜しみ、闇屋、持ち逃げタダ拾い(戦争中は泥棒なんて言葉はないや。
— 坂口安吾 『武者ぶるい論』 青空文庫
阿波屋には領主に当るので、古くから出入りをしていたが、或るとき献上した「撫子」の二曲屏風が侯のお気にめし、ほかの絵もみたいということで、買い溜めてあった又五郎の絵を持っていった。
— 山本周五郎 『おれの女房』 青空文庫
以来約二十年、夫婦娘、三者一体となって業務に精励した結果六軒長屋を端のほうから一軒ずつ買ってゆき、自分は表通りへ店を構え、なお長屋を順次――古材木を買い溜めては――増築に増築して、以て今日の大を成すに至ったものである。
— 山本周五郎 『長屋天一坊』 青空文庫
町の商人は、夏の終りに苅り採った甘蔗の茎を買い溜め、貯蔵しておいて、秋祭りの鎮守の市で、一本一銭か二銭に売った。
— 浜本浩 『甘い野辺』 青空文庫
わたしは実は、あちらで買い溜めた少しばかりの宝石を、大牟田へ土産として持ち帰ったのですが、当人が死んだとあれば、それを、さし当り奥さんへのお土産にしたいのです。
— 江戸川乱歩 『白髪鬼』 青空文庫