捲毛
捲毛
名詞
標準
文例 · 用例
もう追憶の船は港をさりやさしい戀人の捲毛もさらさらに乾いてしまつた草場に昆蟲のひげはふるへて季節は亡靈のやうにほの白くすぎてゆくのです。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
濃い頭の捲毛だけが兄弟似寄つてゐた。
— 岡本かの子 『過去世』 青空文庫
けれどこの時ほど父の姿がわたしに、すらりと格好よく見えたこともなかったし、その灰色の帽子が、こころもち薄くなりかけた捲毛の上に、すっきり合って見えたこともなかった。
— ツルゲーネフ 『はつ恋』 青空文庫
見事に刻まれた唇、青空の如く深く晴れやかな瞳、豊かな金色の捲毛、ドリアンは自分の美しさに初めて堪能した。
— The Portrate of Dorian Gray 『絵姿』 青空文庫
そのころまだ博士の贈りものだとも気づかなかったので、捲毛のカナリヤの籠の側で、庸三はよく籐椅子に腰かけながら、あまり好きでないこの小禽の動作を見守っていたものだが、いくらかの潜在的な予感もあったので、葉子のこの小禽に対する感情をそれとなく探るような気持もあった。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
そして、精緻な輪廓に包まれ、捲毛の金髪を垂れているのが、トレヴィーユ荘の佳人テレーズ・シニヨレの精確な複製だったのである。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
私は悲しくなって、父の胸に抱きついて、キュッとしめつけてみましたが、やはり同じ事を云って、それなり劇場の前で、別れたのが最後でした」 と孔雀は、捲毛の先についていた金雀枝の花弁を湿した口に噛ませて、じっと押し黙ってしまった。
— 小栗虫太郎 『オフェリヤ殺し』 青空文庫
肌は白魚のように透きとおり、黒瞳は夢見るように大きく見開かれ、額にかかる捲毛は鳩の胸毛のように柔らかであった。
— 中島敦 『悟浄出世』 青空文庫