毛細
もうさい
名詞
標準
文例 · 用例
ばくてりやの手は左右十文字に生え、手のつまさきが根のやうにわかれ、そこからするどい爪が生え、毛細血管の類はべたいちめんにひろがつてゐる。
— 萩原朔太郎 『月に吠える』 青空文庫
自分のからだじゅうの血液ははじめてどこにも停滞する事なしに毛細管の末梢までも自由に循環する。
— 寺田寅彦 『備忘録』 青空文庫
お雪さんの、血の急流が毛細管の中を奔っているような、ふっくりしてすべっこくない顔には、刹那も表情の変化の絶える隙がない。
— 森鴎外 『青年』 青空文庫
膝から延びた千鶴子の透明な足首に泛き出た毛細管の鮮やかさが、鋪道で飛びついた犬の蹠のひやりとした冷たさを思い出させ、あれからこれへと渡って来た自分のこうしているさまに、また久慈は溜らなく不快になって来た。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
あの人はタクシーで妾を送ってくれましたが、車にのっている間、あの人の右の手と妾の左の手とはしっかりとむすびついて、まるで手の先の毛細管で二人の血管がつながって、二人の血がごっちゃになってお互いの身体に流れてゆくような気持ちでした。
— 平林初之輔 『華やかな罪過』 青空文庫
下瞼がムクレ返り、毛細血管がふくれ上がり、あたかも赤い絹糸のようであった。
— 国枝史郎 『神州纐纈城』 青空文庫
やっぱり手術のとき、腸をひっぱったりいろいろやるから、何だか腹の中がもめた感じで、毛細管が鬱血してでもいるような腹もちのわるさであったわけです。
— 一九三九年(昭和十四年) 『獄中への手紙』 青空文庫
輿論は自由党の経済的毛細管であり、動員網であるヤミ市の繩張り顔役の勢力に、社会党が一撃を加えたものと認めた。
— 宮本百合子 『今日の日本の文化問題』 青空文庫