鶯餅
うぐいすもち
名詞
標準
文例 · 用例
そこら辺りにやしおの花が鮮に咲き、丸味のある丘には一面茶の木が鶯餅を並べたように萌黄の新芽で装われ、大気の中にまでほのぼのとした匂いを漂わしていた。
— 岡本かの子 『東海道五十三次』 青空文庫
そして、茶と鶯餅とを貰ってからそこに二人で並んでいると、矢代は何か急に老人じみた感じを覚え、またそれが却って一種ほがらかな、ゆったりとした気分になるのだった。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
」 矢代はかるく鶯餅に手を触れてみて、こういう微妙な触感のものなど外国には一つもなかったと思い、めでたい感じで摘まんでから指先の粉を擦り落した。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
矢代は鶯餅をまた一つ摘まむと、仏像の唇に滲んだ艶も指さきにつくように覚えお茶を飲んだ。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
(昭和十七年夏)風船あられ 飯蛸、鯖、魴※、白魚、さより、蛤、赤貝、栄螺、分葱、京葱、鶯餅、草餅、茶飯、木の芽――と、かたへのものゝ記には三月のあぢがこんな具合に列ねてある。
— 正岡容 『下町歳事記』 青空文庫
そのお茶の子は今いう鶯餅のように、餡をつつんだ餅に黄粉をまぶしたものであった。
— 柳田国男 『母の手毬歌』 青空文庫
鶯 鶯の聲を聞かないうちに、よそから鶯餅をもらつて喰べ、何となく明治の世代を思ひ出した。
— 吉川英治 『折々の記』 青空文庫
さくら餅、かしは餅、鶯餅などを盆に見ると、一葉女史の小説の世界だの、自分にとつても、青年頃の濱町河岸や隅田川べりに、遊び呆ふけてゐた春日が連想されてくる。
— 吉川英治 『折々の記』 青空文庫