浸漸
しんぜん
名詞
標準
文例 · 用例
それは蘭医方が既に久しく伝来してゐて、次第に領域を拡張し、次第に世間に浸漸し、漢医方の基礎は到底|撼揺を免るべからざるに至つたからである。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
今にして其浸漸を防止せざれば、早晩健全なる思想との衝突を惹起し、其結果社會に迷惑を及ぼすことあらうと思はれる。
— 狩野亨吉 『天津教古文書の批判』 青空文庫
一、前項の如くにして、明治廿七年の洪水以降年々増加する鑛毒啻に渡良瀬川に止らず、今や利根川北岸に迄浸漸して、四縣下十郡數萬町歩の田宅將に擧て沙漠に化せんとす。
— 田中正造 『公益に有害の鑛業を停止せざる儀に付質問書』 青空文庫
一、本員等は鑛毒浸漸の極多數人民の公益を侵害すること如此深大ならざるに先ち、多年屡々政府に向て忠告を與へたり。
— 田中正造 『公益に有害の鑛業を停止せざる儀に付質問書』 青空文庫
法然、親鸞、日蓮といったように、法燈赫々、旗鼓堂々たる大流でなく、草莽の間、田夫野人の中、或いはささやかなるいなかの神社の片隅などから生れて、誤解と、迫害との間に、驚くべき宗教の真生命をつかみ、またたくまに二百万三百万の信徒を作り、なお侮るべからざる勢いで根を張り、上下に浸漸して行くものがあります。
— みちりやの巻 『大菩薩峠』 青空文庫
或いは尊王攘夷が、海道の主流を外れたこの辺の商業地の間にまで浸漸して来ているかいないか。
— 恐山の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
即ち越の尉佗の國、朝鮮の衞滿の國などがそれであつて、恐らくは當時支那人の流浪者が至るところに疆外に流れ込み、而して其の長い間國家的に訓練された生活状態を、猶未開にして部落生活を脱しなかつた所の土着民族に浸漸させて、それ等をして各やがて民族的國家を形造るべき素因を作らしむべく進みつゝあつたに相違ない。
— 内藤湖南 『日本上古の状態』 青空文庫