有り難い涙
ありがたいなみだ
形容詞
標準
文例 · 用例
それはお神さんの親切に対する有難涙でもなければ、親方に叱られた口惜し涙でもなかった。
— 夢野久作 『芝居狂冒険』 青空文庫
ほんとに、気立てのやさしい、親切な女で実意をつくしてくれることといったら……有難涙がこぼれるくらいだよ。
— または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊 『死せる魂』 青空文庫
偽者めが」 斯う仰言って、さっと御座をお立ち遊ばした時のあの御姿の神々しさ、私などはほんとうに有難涙にくれたものでございました。
— 浜尾四郎 『殺された天一坊』 青空文庫
たとえ、彼らが金箔つきの強盗や泥棒であっても、また自分の理想のために指一本うごかすだけのことをしなくても、とにかく有難涙の溢れるほど自分の第一義的な理想を尊敬しているので、その心中たるや、きわめて潔白なものである。
— ЗАПИСКИ ИЗ ПОДПОЛЬЯ 『地下生活者の手記』 青空文庫
五 見も知らぬ浮浪人を、快く家に通すさえあるに、その技倆を信じて、己が道場を任せて疑わぬ丹後守の度量には、机竜之助ほどの僻けた男も、そぞろ有難涙に暮れるのであります。
— 三輪の神杉の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
大江戸は広いものですから、これを聞いて有難涙に暮れながら、お姿をいただいて帰るものもあり、なかにはばかばかしがって、山師坊主の堕落ぶりの徹底さかげんを、あざ笑って過ぐるものもあります。
— 他生の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
もう、マリアさまのようなあなたさまに、たとえ一日でも二日でも、お預りを願うというのも、ひとえに日ごろの信心のお蔭だと有難涙にくれる次第でございまス。
— 八人の小悪魔 『ノンシャラン道中記』 青空文庫
佐助も泣きはしたけれども彼女のそういう言葉を聞いては無限の感謝を捧げたのであった彼の泣くのは辛さを怺えるのみにあらず主とも師匠とも頼む少女の激励に対する有難涙も籠っていた故にどんな痛い目に遭っても逃げはしなかった泣きながら最後まで忍耐し「よし」と云われるまで練習した。
— 谷崎潤一郎 『春琴抄』 青空文庫