峭
峭
名詞
標準
文例 · 用例
馬返しより太郎坊まで、羊歯の小自由国や、蘚苔の小王国を保護して、樅落葉松の純林、戟を揃へて隣々相立てるあり、これありて裾野の柔美式なる色相図に、剛健なる鉄銹色を点し、無敵の冬をも呵して、一路空山|料峭の天に向ひて立つものあるなり。
— ――明治三十六年八月七日御殿場口にて観察―― 『霧の不二、月の不二』 青空文庫
それから富来、増穂、剣地、藤浜、黒島――外浜を段々奥へ、次第に、巌は荒く、波はおどろになって、平は奇に、奇は峭くなるのだそうで。
— 泉鏡花 『河伯令嬢』 青空文庫
男と女との間の離し、そして匡衡は匡衡、定基は定基で、各々|峭立して疎遠になるに終ったことだったろう。
— 幸田露伴 『連環記』 青空文庫
一つは自分が歩きながらに絶えず変化して吾が眼前に展開し行く奇岩や峭壁や、高い嶺の雲や近い渓の水や、風に揺ぐ玉樹の翠や、野に拡がる※草の香や、姿を見ぬ仙禽の声や、然様いう種々のものの中を、吾が身が経巡り、吾が魂が滾転し行いて、そして自分というものを以て幽秘神異の世界を縫って行く場合である。
— 幸田露伴 『穂高岳』 青空文庫
筆端のおのずから稜峭たるまた已むを得ざるなり」とそれは書きだしてあった。
— 有島武郎 『星座』 青空文庫
然し霧の過ぎ去ると共に、船の右舷に被ひかゝるやうに聳え立つた惠山の峭壁を見た時には、船員も船客も呀と魂を消して立ちすくむのみだつた。
— 有島武郎 『潮霧』 青空文庫
この惡魔のやうな峭壁は遂に船をかみくだいてたに違ひないのだ。
— 有島武郎 『潮霧』 青空文庫
門内の楽曲、厳粛豊麗なる寺院楽律よりやうやう神秘奇峭なる近世的問題楽曲に移る。
— 木下杢太郎 『南蛮寺門前』 青空文庫