寝醒
ね醒
名詞
標準
文例 · 用例
前に夏の部で評釈した句「五月雨や御豆の小家の寝醒めがち」も、どこか色っぽい人情を帯びてはいるが、詩情の本質においてやはりこれらの句と共通している。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
肉色に透き通るような柔らかい絹の靴下やエナメルを塗った高い女の靴の踵は、ブルジョア時代の客間と、頽廃的なダンスと、寝醒めの悪い悪夢を呼び戻す。
— 黒島伝治 『国境』 青空文庫
あれじゃ全然葉子を叩き潰すようなもので、私も寝醒めが悪くて仕様がありませんから。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
では何かな、横取りの三公とか申すそちらの奴は、酒を呑ますとおとなしくなると言うのじゃな」「えッへへ、と言うわけでもねえんだが、折角お止め下すったんだからね、お殿様がいなくなってからすぐにまた喧嘩になっては、お殿様の方でもさぞかし寝醒が悪かろうと、親切に申しあげて見ただけのことなんです。
— 身延に現れた退屈男 『旗本退屈男 第六話』 青空文庫
しかし恩のある人に済まぬ不義理をして死ぬまで寝醒が悪いのは、損をした昔を思い出すより欝陶しいかも知れぬ。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
というのは、前夜、銀座あたりを晩くまでのそのそとほっつき歩いた疲労から、睡眠も思ったより貪り過ぎたためか、妙に今朝の寝醒めはどんよりとしていたので、匆々タオルと石鹸を持って飛び込んで来たのだった。
— 海野十三 『電気風呂の怪死事件』 青空文庫
お浜とても、今まで寝醒めのよいことばかりはなかったのですが、今という今、苦しがる郁太郎の面に文之丞の末期の色がある。
— 鈴鹿山の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
たよられる義理はなかったのだが、たよられてみての上で、見届けることをせず、みすみす仏頂寺の鬼手に任せてしまった後は寝醒めがよくなかった。
— 恐山の巻 『大菩薩峠』 青空文庫