槍尖
やり尖
名詞
標準
文例 · 用例
この傾斜を上り切って、ひょいと顔を出すと、槍ヶ岳の大身の槍尖が、すいと穂を立てている、そうして白い雪が、涎懸けのように半月形をして、その根元の頸を巻いている。
— 小島烏水 『槍ヶ岳第三回登山』 青空文庫
けれども、また、僧都の言われるには、白衣に緋の襲した女子を馬に乗せて、黒髪を槍尖で縫ったのは、かの国で引廻しとか称えた罪人の姿に似ている、私の手許に迎入るるものを、不祥じゃ、忌わしいと言うのです。
— 泉鏡花 『海神別荘』 青空文庫
以前のニヒリスチックの気持の時は全く灰のように冷えてしまって、それは神経衰弱的な恐迫観念がときどき槍尖のように自分を襲って来たが、しかし、最後の落ち着きどころは空虚と見究めがついていたので、まだ自暴自棄の痛快味があった。
— 岡本かの子 『宝永噴火』 青空文庫
それが俯向きに倒れ、両腕を前方に投げ出していて、背の左側には、槍尖らしい桿状の柄が、ニョキリと不気味に突っ立っていた。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
槍尖の根元には、滲み出ている脂肪が金色に輝いていて、それと宮廷楽師の朱色の上衣とが、この惨状全体をきわめて華やかに見せていたのである。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
そして、柄の根元にはモントフェラット家の紋章が鋳刻されていて、引き抜くとはたしてそれが、二叉に先が分れている火焔形の槍尖だった。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
もし一人でもそこから飛び出すものがあれば、その人は海賊の槍尖に突かれ、一人の顔が見えれば、その顔はすばやく確かな矢の的となるのであった。
— フィオナ・マクラウド Fiona Macleod 『剣のうた』 青空文庫
祠後の小杉槍尖の如く、森然として天を刺す。
— 徳富蘇峰 『吉田松陰』 青空文庫