菜売り
なうり
名詞
標準
文例 · 用例
多武峰の増賀上人、横川の源信僧都、皆いずれも当時の高僧で、しかも保胤には有縁の人であったし、其他にも然るべき人で得度させて呉れる者は沢山有ったろうが、まさか野菜売りの老翁が小娘を失った悲みに自剃りで坊主になったというような次第でもあるまいに、更に其噂の伝わらぬのは不思議である。
— 幸田露伴 『連環記』 青空文庫
けふはずゐぶんよく歩きまはつた、ぐつたり労れて帰つて来て一風呂浴びる、野菜売りのおばさんから貰つた茗荷を下物に名物の球磨焼酎を一杯ひつかける、熊本は今日が藤崎宮の御神幸だ、飾馬のボシタイ/\の声が聞えるやうな気がする、何といつても熊本は第二の故郷、なつかしいことにかはりはない。
— 種田山頭火 『行乞記』 青空文庫
年とったおっ母さんが野菜売りに歩きはじめて一日に十銭から十五銭。
— 宮本百合子 『今にわれらも』 青空文庫
路地のなかの家の前に、雨に濡れながら野菜売りが車を引いて通る。
— 林芙美子 『新版 放浪記』 青空文庫
かつて家老が通るたびに草履を脱ぎ捨て、地面に頭をこすりつけねばならなかった者たちから、今度は援助を乞わなければならなくなった元家老よりも、ごくありふれた野菜売りの方がより優れた存在だとおタマは評価している。
— RED BRIDAL 『赤い婚礼』 青空文庫
野菜売りの女が来ている。
— 宮本百合子 『播州平野』 青空文庫
途々通りちがう菜売りの女などが、稀有な文使いだとでも思いますのか、迂散らしくふり返って、見送るものもございましたが、あの老爺はとんとそれにも目をくれる気色はございません。
— 芥川龍之介 『邪宗門』 青空文庫
そして野菜売りに変装して少しばかりの荷をかつぎ、執拗にもH・デューラン氏の裏口から入り込んだ。
— 木村荘十 『雲南守備兵』 青空文庫