差し翳す
さしかざす
動詞
標準
文例 · 用例
『おい/\十口坊、新七不思議とは云ふものの、まだやつと三つだけに非ずや』と云ふ折しも、十口坊は手に持ちたる蝙蝠傘をぱツと開きて、さしかざす。
— 大町桂月 『鹽原新七不思議』 青空文庫
さしかざす小傘に紅き揚羽蝶|小褄とる手に雪散りかかる 京の芸子のこつてりした風俗は、作者の好みによく合致したものらしく、第一集乱れ髪の主要テマとなつたと共にそれからも長い間歌題を供給した。
— 平野萬里 『晶子鑑賞』 青空文庫
すると沙門はさも満足そうに、自分も悠然と立ち上って、あの女菩薩の画像を親子のものの頭の上に、日を蔽う如くさしかざすと、「天上皇帝の御威徳は、この大空のように広大無辺じゃ。
— 芥川龍之介 『邪宗門』 青空文庫
堪へ難ければ、傘とりて、花の上にぞさしかざす。
— 與謝野晶子 『晶子詩篇全集拾遺』 青空文庫
」 唖々子の戯るるが如く、わたしはやがて女中に会計なるものを命じて、倶に陶然として鰻屋の二階を下りると、晩景から電車の通らない築地の街は、見渡すかぎり真白で、二人のさしかざす唐傘に雪のさらさらと響く音が耳につくほど静であった。
— 永井荷風 『十日の菊』 青空文庫
それはさしかざす絵日傘のかげになまめく顔や顔のなかで子安貝の背に彫ってはめたようなすずしい眼ざしをした子で、伊丹幸の□□□という。
— 中勘助 『小品四つ』 青空文庫
父は田崎が揃えて出す足駄をはき、車夫喜助の差翳す唐傘を取り、勝手口の外、井戸端の傍なる※小屋を巡見にと出掛ける。
— 永井荷風 『狐』 青空文庫
」 いう間もおそし、一同はわれ遅れじと梯子段を駈け下りて店先まで走り出ると、差翳す半開きの扇子に夕日をよけつつ静に船宿の店障子へと歩み寄る一人の侍。
— 永井荷風 『散柳窓夕栄』 青空文庫