紫糸
むらさきいと
名詞
標準
文例 · 用例
青糸毛の牛車が三井寺の門前にしずかに停まると、それより先きに紫糸毛の牛車が繋がれていた。
— 岡本綺堂 『玉藻の前』 青空文庫
邪魔せられまい」 そっちの糸毛ばかりをひけらかして、こっちの紫糸毛が見えぬかというように、遠光も自分の牛車をあごで示しながら言った。
— 岡本綺堂 『玉藻の前』 青空文庫
紫糸毛の牛車のそばには、遠光のほかに逞しい侍が七、八人も控えていて、肉に食い入るほどに烏帽子の緒をかたく引き締めたあごをそらせて、こっちをきっと睨みつめていた。
— 岡本綺堂 『玉藻の前』 青空文庫
分厚く、薄桃色に 肥脂をこめた不思議な生物の掌 むっくりとした指のつけね ほそやかな指先 小高い周囲の膨らがりは 夢を胎む淡紅色の丘のように うち白み 凹んだ なかほど ひそやかに廻る血行にときめき あでやかな紫糸の静脈は 悦び悲しみに 微妙なその色調を更える。
— 一九二三年(大正十二年) 『日記』 青空文庫