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移香

移香
名詞
1
標準
文例 · 用例
ああ、江戸児はこの味を知るまい、と乗合の婦の移香を、楽みそうに、歯をスーと遣って、片手で頤を撫でていたが、車掌のその御注意に、それと心付くと、俄然として、慄然として、膚寒うして、腰が軽い。
泉鏡花 婦系図 青空文庫
十九 寝室へ戻って、何か思切ったような意気込で、早瀬は勢よく枕して目を閉じたが、枕許の香は、包を開けても見ず、手拭の移香でもない。
泉鏡花 婦系図 青空文庫
……貴女様の膚の移香、脈の響をお釵から伝え受けたいのでござります。
泉鏡花 伯爵の釵 青空文庫
これに悚然とした状に、一度すぼめた袖を、はらはらと翼のごとく搏いたのは、紫玉が、可厭しき移香を払うとともに、高貴なる鸚鵡を思い切った、安からぬ胸の波動で、なお且つ飜々とふるいながら、衝と飛退くように、滝の下行く桟道の橋に退いた。
泉鏡花 伯爵の釵 青空文庫
あとの大戸を、金の額ぶちのように背負って、揚々として大得意の体で、紅閨のあとを一散歩、贅を遣る黒外套が、悠然と、柳を眺め、池を覗き、火の見を仰いで、移香を惜気なく、酔ざましに、月の景色を見る状の、その行く処には、返咲の、桜が咲き、柑子も色づく。
泉鏡花 みさごの鮨 青空文庫
ちらちら紅色のが交って、咲いていますが、それにさえ、貴方、法衣の袖の障るのは、と身体をすぼめて来ましたが、今も移香がして、憚多い。
泉鏡花 草迷宮 青空文庫
小児の背中に、その膝についた手の仕切がなかったら、膚へさぞ移香もするだろうと思うように、ふっくりとなだらかに褄を捌いて、こう引廻した裾が、小児を庇ったように、しんせつに情が籠っていたんだよ。
泉鏡花 縁結び 青空文庫
」 と紅筆の戀歌、移香の芬とする懷紙を恭しく擴げて、人々へ思入十分に見せびらかした。
泉鏡太郎 片しぐれ 青空文庫