涙脆い
なみだもろい
形容詞
標準
文例 · 用例
七人目で、後妻の腹から産れた子を、ある在方へくれる話を取り決めて、先方の親爺がほくほく引き取りに来た時、※弱そうな乳呑み児を手放しかねて涙脆い父親が泣いたということを、母親からかつて聞かされて、あまりいい気持がしなかった。
— 徳田秋声 『黴』 青空文庫
場合によつて非常に悲慘な境遇に陷つた罪人と其親類とを、特に心弱い、涙脆い同心が宰領して行くことになると、其同心は不覺の涙を禁じ得ぬのであつた。
— 森鴎外 『高瀬舟』 青空文庫
場合によつて、非常に悲慘な境遇に陷つた罪人と其親類とを、特に心弱い、涙脆い同心が宰領して行くことになると、其同心は不覺の涙を禁じ得ぬのであつた。
— 森林太郎 『高瀬舟』 青空文庫
神様といふものは随分費用のかゝるものだが、その中で新教の神様は質素で倹約で加之に涙脆いので婦人には愛される方だが、余りに同情があり過ぎるので、時々困らせられる。
— 大正五(一九一六)年 『茶話』 青空文庫
)そんな輩は涙脆い女を見つけて、一瓶幾らといふ値段で涙を買取つて、一日も早く喪を済まさうとする。
— 大正五(一九一六)年 『茶話』 青空文庫
」三弗で5・6(夕) 罪のない子役のませた仕草は、涙脆い桟敷の婦人客を直ぐ泣かせる事が出来るので、横着な興行師や俳優やは、成るべく年端も往かない、柄の小さい子役を舞台に立たせようとする。
— 大正七(一九一八)年 『茶話』 青空文庫
そなたは、今宵氣が疲れてゐると見え、取りわけて涙脆い!
— 菊池寛 『袈裟の良人』 青空文庫
『彼娘の容貌を見ると直に前の家内が我輩の眼に映る』と言つた敬之進の言葉を思出して見ると、『昔風に亭主に便といふ風で、どこまでも我輩を信じて居た』といふ女の若い時は――いづれこのお志保と同じやうに、情の深い、涙脆い、見る度に別の人のやうな心地のする、姿ありさまの種々に変るやうな人であつたに相違ない。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫