燻ぶる
ふすぶる
動詞
標準
文例 · 用例
生の葉は燃えがわるく、いつまでも燻ぶる程度を餘り出なかつたが、落葉と柴との火勢に助けられて燃えた。
— 島木健作 『生活の探求』 青空文庫
粗朶がぶしぶしと燻ぶるその向座には、妻が襤褸につつまれて、髪をぼうぼうと乱したまま、愚かな眼と口とを節孔のように開け放してぼんやり坐っていた。
— 有島武郎 『カインの末裔』 青空文庫
一人の老人は顏を地面へ擦りつけるやうにして燻ぶる火を吹いて居る。
— 長塚節 『彌彦山』 青空文庫
もうよぼよぼになったお爺さんが、長い白い髭を垂れて日当たりのいい南の廊下で、暖かい陽光を浴びて咲き輝いている鉢植えの福寿草を前に、老眼鏡をかけて新聞を読んでいるのや、北海道辺の新開地の農夫が、木の根の燻ぶる炉ばたで、罐詰の空罐に植えた福寿草を、節くれだった黒い手でいじっているのなどは、いい調和です。
— 佐左木俊郎 『季節の植物帳』 青空文庫
彼は一人いて一人自分の熱で燻ぶるような心持がした。
— 夏目漱石 『道草』 青空文庫
この紅海にも産し、ある海藻とともに諸香に合せ婦女の身を燻ぶると、猫に天蓼ほど男子を惹き密くる由。
— 馬に関する民俗と伝説 『十二支考』 青空文庫
無尽蔵にいる兎や狐を狩り取ることもいと容易すければ、その肉を燻ぶることも焼くことも大して手間は取らなかったが、私の目指す森林の奥まで持ち運ぶ方法に苦しんだ。
— 国枝史郎 『沙漠の古都』 青空文庫
憂鬱に近い挙止の間々に時とすると、燻ぶる焔のように激しい閃きがちらつくことがある。
— 宮本百合子 『古き小画』 青空文庫