緊乎
緊乎
名詞
標準
文例 · 用例
途端にくゎいと狐が鳴いたから、娘は緊乎と私を抱く。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
薫の高い薬を噛んで口移しに含められて、膝に抱かれたから、一生懸命に緊乎縋り着くと、背中へ廻った手が空を撫でるようで、娘は空蝉の殻かと見えて、唯た二晩がほどに、糸のように瘠せたです。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
」 あわれ、高坂が緊乎と留めた手は徒に茎を掴んで、袂は空に、美女ヶ原は咲満ちたまま、ゆらゆらと前へ出たように覚えて、人の姿は遠くなった。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
雲か、靄か、綿で包んだやうに凡そ三抱ばかりあらうと思ふ丸柱が、白く真中にぬつく、と立つ、……と一目見れば、其の柱の根に一人悄然と立つた婦の姿……『お浦……』と膝を支いて、摺寄つて緊乎と抱いて、言ふだけの事を呼吸も絶々に我を忘れて※舌つた。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
仰向けに胸へ緊乎と手を組んで、両眼を押睡って、気を鎮めようとしたのです。
— 泉鏡花 『甲乙』 青空文庫
――帯も髪も乱れながら、両膝を緊乎結えている由紀を、板の間に抱いたまま、手を離そうにも、頭をふり、頭を掉って、目を結えたのをはずしませんから、見くびって、したたかくい込んでいた蚊の奴が、血をふいてぼとりと落ちたのです。
— 泉鏡花 『甲乙』 青空文庫
台場の停車場から半道ばかり、今朝此原へかゝつた時は、脚絆の紐も緊乎と、草鞋もさツ/\と新しい踏心地、一面に霧のかゝつたのも、味方の狼煙のやうに勇しく踏込むと、さあ、一ツ一ツ、萱にも尾花にも心を置いて、葉末に目をつけ、根を窺ひ、まるで、美しい蕈でも捜す形。
— 泉鏡花 『二世の契』 青空文庫
桂木は弾き飛ばされたやうに一|間ばかり、筵を彼方へ飛び起きたが、片手に緊乎と美人を抱いたから、寝るうちも放さなかつた銃を取るに遑あらず。
— 泉鏡花 『二世の契』 青空文庫