忍び逢う
しのびあう
動詞
標準
文例 · 用例
そういう深い宿怨をたがいの血のなかにもった大炊介と行子の結びつきは、その後どんな風に運んでいたかというと、夏ごろ、ゆくりなく渡し舟に乗合わしただけの二人が、わずか一と月ほどののち、蟋蟀の声もおさない秋のはじめに、毎夜のように屋形の裏庭で忍び逢う退引ならぬ関係になっていたのである。
— 久生十蘭 『うすゆき抄』 青空文庫
」と国貞は鶴屋の主人と差向って頻に杯を取交していた時、行き交う一艘の屋根船の中から、「月あかり見ればおぼろの舟の内、あだな二上り爪弾きに忍び逢うたる首尾の松。
— 永井荷風 『散柳窓夕栄』 青空文庫
ついては深夜、由利どのと忍び逢うやくそくなりしをさいわい、伊吹屋へまいり、眠る由利どのを一刺しにいたし申し候。
— 黒門町伝七捕物帳 『乳を刺す』 青空文庫
夕ごりの霜を歌う歌には、忍び逢うた時の喜びとその恋の背景全体とが、冬の夕、冬の朝の光景のうちに、驚くべく鮮やかに現わされる。
— 和辻哲郎 『日本精神史研究』 青空文庫
いつしか、東宮仕えの堀川ノ具親と忍び逢うて、宮中から馳け落ちした。
— あしかが帖 『私本太平記』 青空文庫
いっしょにお越しなされませ」 忍び会うていたふたりのおどろきはむろんでしたが、それを押えた名人がいいました。
— 京人形大尽 『右門捕物帖』 青空文庫
それが、半年ほど前に、妙なきっかけから、愛し合うようになって、今では股野の目を盗んで、しばしば忍び会う仲になっていた。
— 江戸川乱歩 『月と手袋』 青空文庫