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濛靄

濛靄
名詞
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標準
文例 · 用例
そのころになると、この北の海にも春らしい紫色の濛靄が沖に立ちこめ、日和山の桜の梢にも蕾らしいものが芽を吹き、頂上に登ると草餅を売る茶店もあって、銀子も朋輩と連れ立ち残雪の下から草の萌え出るその山へ登ることもあった。
徳田秋声 縮図 青空文庫
十五 河の氷がようやく崩れはじめ、大洋の果てに薄紫の濛靄が煙るころ、銀子はよその家の妓三四人と、廻船問屋筋の旦那衆につれられて、塩釜へ参詣したことがあった。
徳田秋声 縮図 青空文庫
濛靄のかかったような銀子の目には、誰の顔もはっきりとは見えず、全身|薔薇の花だらけの梅村医師の顔だけが大写しに写し出されていた。
徳田秋声 縮図 青空文庫
坂の上へあがると、煙突や灯の影の多い広い東京市中が、海のような濛靄の中に果てもなく拡がって見えたり、狭いごちゃごちゃした街が、幾個も幾個も続いたりした。
徳田秋声 足迹 青空文庫
紙片、莨の吸殻などの落ち散った汚い地面はまだしっとりして、木立ちや建物に淡い濛靄がかかり、鳩の啼き声が湿気のある空気にポッポッと聞えた。
徳田秋声 足迹 青空文庫
水の黝んだ川岸や向うの広い通りには淡い濛靄がかかって、蒼白い街燈の蔭に、車夫の暗い看板が幾個も並んでいた。
徳田秋声 足迹 青空文庫
入舟町の方から渡って行く中ノ橋あたりは、まだ朝濛靄が深く、人通りも少かった。
徳田秋声 足迹 青空文庫
日々に接しているお増夫婦のほしいままな生活すらが、美しい濛靄か何ぞのような雰囲気のなかに、お今の心を涵しはじめるのであった。
徳田秋声 青空文庫