鎔
鎔
名詞
標準
文例 · 用例
火と燃ゆる人生の鎔炉に、鉄は鍛えられんとするのである。
— 内村鑑三 『ヨブ記講演』 青空文庫
死ぬることへ、まっすぐに一すじ、明快、完璧の鋳型ができていて、私は、鎔かされた鉛のように、鋳型へさっと流れ込めば、それでよかった。
— 太宰治 『狂言の神』 青空文庫
洞中の秘密造船所の中では、海底戰鬪艇の方でも、私の方でも、鎔鐵爐、冶金爐等から※々と吹き出す熱火の光は魔神の紅舌のごとく、互に打おろす大鐵槌の響は、寂寞たる洞窟を鳴動して、朝日島の海の神樣も、定めて膽を潰した事であらう。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
西の空うち見やれば二つの小さき星、ひくく地にたれて薄き光を放てり、しばらくして東の空|金色に染まり、かの星の光|自から消えて、地平線の上に現われし連山の影|黛のごとく峰々に戴く雪の色は夢よりも淡し、詩人が心は恍惚の境に鎔け、その目には涙あふれぬ。
— 国木田独歩 『星』 青空文庫
人生に霊と体との二つの部分があって、それが鎔合せられている。
— 森鴎外 『青年』 青空文庫
虚空には銅色の日の髑髏転びかがやき、雲はまた血のごと沈黙に鎔けゆき影だに留めず。
— 北原白秋 『第二邪宗門』 青空文庫
この書から、宗教的農學者佐藤|信淵の「天柱記」、「鎔造化育論」並びに同著者の農業本位の、而も最も古いと云はれる連山易と天主教の耶蘇教理とから綜合した日本中心主義を發見した。
— 憑き物 『泡鳴五部作』 青空文庫
砲兵工廠の鉄砲玉は鉛を鎔かして鋳る。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫