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禁苑

きんえん
名詞
1
標準
文例 · 用例
そして聯想が彼の不可解の禁苑としてゐる記憶圈内に入つて行くと、恰も鋸の目立を聞いたやうに、或はまた齲齒へ針を當てたやうな激しい不快感を起して、それから先へ進むのをひとりでに阻止した。
木下杢太郎 少年の死 青空文庫
我輩は尚此時に至る迄も不安心に思ひし程なるに、兵士を集めて吹上の禁苑に召し、簡單なる慰勞の詔を以て、幾萬の兵士一言の不平を唱る者もなく、唯殊恩の渥きを感佩して郷里に歸り、曾て風波の痕を見ざりしは、世界中に比類少なき美事と云ふ可し。
福沢諭吉 帝室論 青空文庫
」 大政しげくして、西なる京へ君はしも、御夢ならでは御幸なく、比叡の朝は霞む共、鴨の夕風涼しくも、禁苑の月|冴ゆとても、鞍馬の山に雪降るも、御所の猿辻猿の頬に朝日は照れど、烏啼く椋の梢に日は入れど、君は来まさず。
徳冨健次郎 みみずのたはこと 青空文庫
入るべからざる禁苑に入り込んで、見ては悪い妖精の乱舞を見て居るような、異様な自責に息がはずみます。
野村胡堂 踊る美人像 青空文庫
これは後で氣付いたことですが、死んだ當主八十郎の母で、主水の繼母に當る女隱居は、お禮と言つて四十四五、これは年齡を飛躍して驚くべき美人で、姪の多世里の幼々しい可愛らしさと共に、まことに罪深い禁苑の果物だつたのです。
邪戀の償ひ 錢形平次捕物控 青空文庫
すでに禁苑の一|劃とおぼしく、美々しい軍装の近衛兵が戟を持って佇立していたが、林冲を見ると、唖のごとく黙礼した。
吉川英治 新・水滸伝 青空文庫
春の末に代官町の兵営の前を竹橋へ通ると、右手の吹上の禁苑の中から、いつでも雉の声が聞こえていた。
柳田国男 雪国の春 青空文庫
禁苑奥深く入ればあるいは緑にあるいは赤に身を飾った幾十個の建物、あるものは蓮花を下に泛べあるものは松の梢を高くかざして各々が美しき場所をと選んでいる。
柳宗悦 民藝四十年 青空文庫