擬い
なずらい
名詞
標準
文例 · 用例
大雪田の石の峰を超えて、三角点の下に来た、木曾山脈を西に控えて、その間の高原を、天竜川が白く流れ、仙丈岳は渓谷を隔てて、その頂上の、噴火口と擬いそうな欠けたところが、大屋根の破風のように聳えて、霧を吐く窓になっている。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
僧都、すぐに出向うて、遠路であるが、途中、早速、硝子とその擬い珠を取棄てさして下さい。
— 泉鏡花 『海神別荘』 青空文庫
これもここで望の達せらるる兆か、と床しい、と明が云って、直ぐにこの戸棚を、卓子擬いの机に使って、旅硯も据えてある。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
琉球|擬いの羽織を被たが、引かけざまに出て来たか、羽織のその襟が折れず、肩をだらしなく両方を懐手で、ぎくり、と曲角から睨んで出た、(これこれ、いやさ、これ。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
引き返してトンネル横町を徘徊してもただ汚らしく和洋蕪雑に混っている擬いものの感じのする街に過ぎなかった。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
両岸は洋館や洋館|擬いの支那家屋の建物が塀のように立ち並んでいるところが多く、ところどころに船が湊泊する|船溜りが膨らんだように川幅を拡げている。
— 岡本かの子 『河明り』 青空文庫
洋室|擬いに窓を狭め、畳が敷いてある様子までが、胡乱に感じられる部屋つきです。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
臥し向っている洋室|擬いの腰張のニス板が、睫毛の間から見はるかす限りもない大地の拡がりに感ぜられて来ました。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫