踏越
踏越
名詞
標準
文例 · 用例
鈍な、はずみの無い、崩れる綿を踏越し踏越しするやうに、褄が縺れる、裳が亂れる……其が、やゝ少時の間見えました。
— 泉鏡太郎 『人魚の祠』 青空文庫
山坂を踏越えて、少々|平な盆地になった、その温泉場へ入りますと、火沙汰はまた格別、……酷いもので、村はずれには、落葉、枯葉、焼灰に交って、※子鳥、頬白、山雀、鶸、小雀などと言う、紅だ、青だ、黄色だわ、紫の毛も交って、あの綺麗な小鳥どもが、路傍にはらはらと落ちている。
— 泉鏡花 『唄立山心中一曲』 青空文庫
……あの鐵の棒につかまつて、ぶるツとしながら繋目の板を踏越すのは、長屋の露地の溝板に地震と云ふ趣あり。
— 泉鏡太郎 『大阪まで』 青空文庫
其後幾年か経って再び之を越えんとした時にも矢張怕ろしかったが、其時は酒の力を藉りて、半狂気になって、漸く此|怕ろしい線を踏越した。
— 二葉亭四迷 『平凡』 青空文庫
踏越してから酔が醒めると何とも言えぬ厭な心持になったから、又酒の力を藉りて強いて纔に其不愉快を忘れていた。
— 二葉亭四迷 『平凡』 青空文庫
ブリッジを渡る暇もないのでレールを踏越えて、漸とこさと乗込んでから顔を出すと、跡から追駈けて来た二葉亭は柵の外に立って、例の錆のある太い声で、「芭蕉さまのお連れで危ない処だった」といった。
— 内田魯庵 『二葉亭余談』 青空文庫
私は錯乱した畳や襖の上を踏越えて、身につけるものを探した。
— 原民喜 『夏の花』 青空文庫
私は最後に、ポツクリ折れ曲つた楓の側を踏越えて出て行つた。
— 原民喜 『夏の花』 青空文庫