旧日
きゅうじつ
名詞
標準
文例 · 用例
すべてこうした幻想風の俳句は、芭蕉始め他の人々も所々に作っているけれども、その幻想の内容が類型的で、旧日本の伝統詩境を脱していない。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
箱根の気分は、旧日本のそれでなくして、矢張新日本のそれである、老人の好みでなくして青年の好みである。
— 萩原朔太郎 『石段上りの街』 青空文庫
そのため夫人は一面において旧日本的な婦道と礼節とによって、恭しく彼に仕えながらも、半面においては彼を子供扱いにせねばならなかった。
— 室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ 『小泉八雲の家庭生活』 青空文庫
それはとにかく、日本紙に大きな文字を木版刷りにした書物のページに、点々と真紅の不審紙を貼り付けたものの視像を今でもありありと想い出すことができるが、その追憶の幻像を透して、実にいろいろな旧日本の思想や文化の万華鏡がのぞかれるような気がするのである。
— 寺田寅彦 『柿の種』 青空文庫
こういうふうに、旋律的な物売りの呼び声が次第になくなり、その呼び声の呼び起こす旧日本の夢幻的な情調もだんだんに消えうせて行くのは日本全国共通の現象らしい。
— 寺田寅彦 『物売りの声』 青空文庫
旧日本橋区米沢町の老舗の和菓子屋に生まれ、敗戦を中学一年で迎えた小林信彦によれば、関東大震災で失われたとされる江戸文化の名残は、一九四五(昭和二十)年三月十日の大空襲まで残っていたそうです。
— 富田倫生 『本の未来』 青空文庫
私が十五歳で、築地の府立中学校に通っている頃、銀座の旧日報社の北隣――今は額縁屋になっている――にめざましと呼ぶ小さい汁粉屋があって、またその隣に間口二|間ぐらいの床店同様の古本店があった。
— 岡本綺堂 『一日一筆』 青空文庫
明くれば早暁、老鶯の声を尋ねて欝叢たる藪林に分け入り、旧日の「我」に帰りて夢幻境中の詩人となり、既往と将来とを思ひめぐらして、神気甚だ爽快なり。
— 北村透谷 『三日幻境』 青空文庫