焼出
やけで
名詞
標準
文例 · 用例
「吉原の小浜屋(引手茶屋)が、焼出されたあと、仲之町をよして、浜町で鳥料理をはじめました。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫
それでは、おなじに、吉原を焼出されて、一所に浜町へ落汐か、というと、そうでない。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫
当時飛鳥も落ちると言ふ、お妾が一人乗つて出たが、船の焼出したのは、主が見さしつた通りでがす。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
その時は、函館を発つ汽車汽船が便毎に「焼出され」の人々を満載してゐた頃で、其等の者が続々入込んだ為に、札幌にも小樽にも既う一軒の貸家も無いといふ噂もあり、且は又、先方へ行つて直ぐ家を持つだけの余裕も無しするから、家族は私の後から一先づ小樽にゐた姉の許へ引上げる事にした。
— 石川啄木 『札幌』 青空文庫
◎小樽は、さらでだに人口増加率の莫迦に高い所へ持つて来て、函館災後の所謂「焼出され」が沢山入込んだ際だから、貸家などは皆無といふ有様。
— 石川啄木 『悲しき思出』 青空文庫
お三輪に、彼女が娵のお富に、二人の孫に、子守娘に、この家族は震災の当時東京から焼出されて、浦和まで落ちのびて来たものばかりであった。
— 島崎藤村 『食堂』 青空文庫
お三輪と同じように焼出された親戚の中には、東京の牛込へ、四谷へ、あるいは日暮里へと、落ちつく先を尋ね惑い、一年のうちに七度も引越して歩いて、その頃になってもまだ住居の定まらない人達すらあった。
— 島崎藤村 『食堂』 青空文庫
われわれの方から言いましても、こうしてお互いに焼出されてしまって、何か食う道を考えなけりゃなりません。
— 島崎藤村 『食堂』 青空文庫