遅緩
ちかん
名詞
標準
文例 · 用例
その少量の取り残された残雪も氷河となって、遅緩なる運動を以て、山から下りて来るのである。
— 小島烏水 『高山の雪』 青空文庫
すなわち、こういう遅緩なテンポとリズムを使用することによって、ロシアの片田舎のムジークの鈍重で執拗な心持ちがわれわれ観客の心の中にしみじみとしみ込んで来るような気がしないことはない。
— 寺田寅彦 『映画雑感(1)』 青空文庫
船は十一分の重量あれば、進行極めて遅緩にして、糸魚川に着きしは午後四時半、予定に後るること約二時間なり。
— 泉鏡花 『取舵』 青空文庫
紀氏は遅緩かしくなつて、友達仲間を説き廻つて、「誰でもいゝ、この画を一万円に周旋つて呉れたなら、手数料として千円位出しても可い。
— 大正五(一九一六)年 『茶話』 青空文庫
もし遅緩に及び候わば旬日を出でずして、ことごとく天誅を加うべきものなり。
— 第一部下 『夜明け前』 青空文庫
私の健康も確実に回復するほうに向かって行ったが、いかに言ってもそれが遅緩で、もどかしい思いをさせた。
— 島崎藤村 『嵐』 青空文庫
」 浅田は椅子から飛上って、自動車を待つ間も遅緩しく階段を駈下りていった。
— 松本泰 『秘められたる挿話』 青空文庫
わたしは地上に落ちていたヴァイオリンを拾いあげると、それを弾きながら歩いてみたが、わたしの霊感は緊張しながら遅緩し、痙攣しながら流動し、どこへどう伸びてゆくのかわからなくなる。
— 原民喜 『鎮魂歌』 青空文庫