苦々
くく
名詞
標準
文例 · 用例
そこにはいつも科学的な唯物観と宿命観が、人生を苦々しく情象し、機械と鉄槌の重圧が、詩を叩き出そうと意志している。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
それは多くの人にとつて、無上に樂しい甘美な追懷であるだらうが、獨りSにとつては反對であり、耐へがたき憎惡に價するほど、暗く苦々しいものであつた。
— 萩原朔太郎 『非論理的性格の悲哀』 青空文庫
詩集『故郷圖繪集』は、この二つの心境の對立した、苦々しく不調和な表象を讀者にあたへた。
— 萩原朔太郎 『室生犀星君の飛躍』 青空文庫
心無き振舞いかな、と老生少しく苦々しく存じ居り候ところに、またもや、老人もこのごろは落ちましたな、こんな店でとぐろを巻いているとは知らなかった、と例の人を見くだすが如き失敬の態度にて老生を嘲笑仕り候。
— 太宰治 『花吹雪』 青空文庫
私は平生アンチヴィヴィセクショニストなどという者に対して苦々しい感じを抱いている。
— 寺田寅彦 『断片(1)』 青空文庫
とにかくこうなるとせっかくの最初の空想も雲消霧散して残るものは世智辛い苦々しい現実である。
— 寺田寅彦 『雑記帳より(1)』 青空文庫
その短い文章は例の通りキビキビとして極めて要を得ているのは勿論であるが、その行文の間に卑怯な迫害者に対する苦々しさが滲透しているようである。
— 寺田寅彦 『アインシュタイン』 青空文庫
右報告、と捨てぜりふのように、さも苦々しく言い切って壇を下りると、またがやがやと騒ぐ声が一しきりした。
— 寺田寅彦 『議会の印象』 青空文庫