日劇
にちげき
名詞
標準
文例 · 用例
日劇を、ぐるりと取り巻いている入場者の長蛇の列を見ると、私は、ひどく重い気持になるのである。
— 太宰治 『弱者の糧』 青空文庫
試験の前日にはかならず新世界の第一朝日劇場へ出かけてマキノ輝子の映画を見、試験の日にそのプログラムの紙を持ってきてみせた。
— 織田作之助 『雨』 青空文庫
点取虫だといわれて、初めてはっと気が付くと、豹一はもう首席という綽名に芸もなくやに下って居られなくなり、自分が余り勉強もせずに首席になれたことを思いこませようとして、試験の前日には必ず新世界の第一朝日劇場に出掛けてマキノ映画を見、試験の日にそのプログラムの紙をもって来て見せるのだった。
— 織田作之助 『雨』 青空文庫
「あいつはたかが点取虫だ」 一学期の試験の前日、豹一は新世界の第一朝日劇場へ出掛けた。
— 織田作之助 『青春の逆説』 青空文庫
笹村は、ある日劇場の人込みのなかで、卒倒したお銀の哀れな姿を思い出さずにはいられなかった。
— 徳田秋声 『黴』 青空文庫
この広い東京の、これだけの人数の中で、僅か数万の男女が、或る日日劇のまわりをとりまいて犇き合ったというだけのことなら、それはその日のそのことだけの見っともなさの範囲で終ったであろう。
— 宮本百合子 『「健やかさ」とは』 青空文庫
有楽町の駅からおりて、朝日へ出るまで日劇の横の谷間の風!
— 一九四一年(昭和十六年) 『獄中への手紙』 青空文庫
一九二九年以後ヨーロッパ、特にフランスの事情は一変して、漫遊客の数は今日劇減している、思えば我が一家は、世界事情が将に一転化しようとするその前夜、未だ夥しくヴルヴァールを彷徨していたアメリカ人の間に計らずも互していたのであった。
— 宮本百合子 『中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註』 青空文庫