幻辞.com

弾き出す

はじきだす
動詞
1
標準
文例 · 用例
そうして激昂する心を抑えてピアノの前に坐り所定曲目モザルトの一曲を弾いているうちにいつか頭が変になって来て、急に嵐のような幻想曲を弾き出す、その狂熱的な弾奏者の顔のクローズアップに重映されて祖国の同志達の血潮に彩られた戦場の光景が夢幻のごとくスクリーンの面を往来する。
寺田寅彦 映画雑感6 青空文庫
リストが音楽商の家の階段を気軽にかけ上がって、ピアノの譜面台の上に置き捨てられたショパンの作曲に眼をつけて、やがて次第に引入れられて弾き初める、そこへいったん失望して帰りかけたショパンがそっと這入って来て、リストと背中合せに同じ曲を弾き出す場面には一種の俳諧を感ぜられて愉快である。
寺田寅彦 映画雑感6 青空文庫
そのとき食卓の日本料理の美味のうちに急に鳴物の入った三味線を土人街の坊主頭の幇間が弾き出すと、香港あたりでよく歌われる鴨緑江節を女達が噛むようにうたいだした。
吉行エイスケ 孟買挿話 青空文庫
コンクールを受けた連中はいずれもうやうやしく審査員に頭を下げ、そして両足をそろえて、つつましく弾くのだったが、寿子はつんとぎこちない頭の下げ方をして、そしていきなり股をひらいて、大きく踏ん張ると、身体を揺り動かしながら、弾き出すのだった。
織田作之助 道なき道 青空文庫
ところが、そのうち竪琴のグリッサンドが、夢の中の泡のように消えて行って、旗太郎の第一|提琴が主題の旋律を弾き出すと、……その時、実に予想もされ得なかった出来事が起ったのである。
小栗虫太郎 黒死館殺人事件 青空文庫
自分が弾き出すと、いつも法水は、その上をいって、またその二つが絶えず絡み合うのだが、そうしていつ尽きるか涯しない迷路の中を、真転びひしめき行くように思われた。
小栗虫太郎 潜航艇「鷹の城」 青空文庫
婆あさんが据わって三味線を弾き出す
森鴎外 青年 青空文庫
それを待ち設けて、富蔵は爪弾きで三味線を弾き出すのである。
三河万歳 半七捕物帳 青空文庫
弾き出す(はじきだす) — 幻辞.com