鬱散
うっさん
名詞
標準
文例 · 用例
常々頭の上らない人に向つて少し勝手な事を言つて見たいとか、それとなく日頃の不平を鬱散させたいとか思ふ時には、彼は前後の見境もなく醉うたやうなさまをしてそれをやるのである。
— 水野仙子 『醉ひたる商人』 青空文庫
節は初夏の未だ寒き、この寥々たる山中に来り宿れる客なれば、保養鬱散の為ならずして、湯治の目的なるを思ふべし。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
鬱散養生とあれば花見も宜し湯治も賛成なり、或は集会宴席の附合も自から利益なれども、其外出するや子供を家に残して夫婦の留守中、下女下男の預りにて、初生児は無理に牛乳に養わるゝと言う。
— 福沢諭吉 『新女大学』 青空文庫
もしもの事があっても困るが、日ごろの鬱散じに、あの子も、何か楽しみが無うてはなるまい。
— 三上於菟吉 『雪之丞変化』 青空文庫
新女優の祖川上貞奴とならずに堅気な家の細君であって、時折の芝居見物に鬱散する身となっていたかも知れない。
— 長谷川時雨 『マダム貞奴』 青空文庫
かうして出来た釈教歌が、僧家の鬱散に弄ばれる様になるまでには、長い時を経た事であらう。
— 後期王朝文学史 『女房文学から隠者文学へ』 青空文庫
かく申すと禅宗めきておりますけれども、人生五十年の旅路の鬱散には、かかる人生観、世界観の必要を感じ、相対的世界にありてすらも、かくのごとき愉快ある以上は、絶対的世界すなわち真正の理想世界の愉快はいかばかりならんかと、推して想像することができます。
— 井上円了 『通俗講義 霊魂不滅論』 青空文庫
――何の用意もないが、ご病後の鬱散じに、という軽い意味で、誘いには、御舎弟も共にとあったが、その師泰は、「いや道誉の客となるのは苦手だ。
— 黒白帖 『私本太平記』 青空文庫