行客
こうかく
名詞
標準
文例 · 用例
石山、松山、雑木山と数うる遑を行客に許さざる疾き流れは、船を駆ってまた奔湍に躍り込む。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
かかる詐欺が行わるべしとは今の人に受け取れぬが、『義残後覚』七、太郎次てふ大力の男が鬼面を冒り、鳥羽の作り道で行客を脅かし追剥するを、松重岩之丞が斫り露わす条、『石田軍記』三、加賀野江弥八が平らげた伊吹の山賊鬼装して近郷を却かした話などを参ずるに、迷信強い世にはあり得べき事だ。
— 猴に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
一度女人が狗頭猴に厳しく襲われ、幸いに行客に救われしも数日後死んだと聞いた事あると。
— 猴に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
○コロラド丸出帆 過般来船内にチブス患者発生したるため、横浜に停船を命ぜられおりし沙市行客船コロラド丸は一昨十二日解禁されたるを以て今十四日午後六時出帆、定期航路に就く事となれり。
— 夢野久作 『暗黒公使』 青空文庫
九月六日寄信州蓼科高原滯在中之原君地僻無行客 地僻にして行客なく、秋闌山徑清 秋闌にして山径清し。
— 河上肇 『閉戸閑詠』 青空文庫
彼は小型の手提鞄をもっただけで、旅行客がたった今、倫敦へ着いた計りという様子で自動車をパーク旅館へ疾走らせた。
— 松本泰 『P丘の殺人事件』 青空文庫
勿論それは毎日毎日観飽きている賑かさには相違ないが、しかし同時に其賑かさは新来の旅行客を喜ばすに足る大変|珍奇い賑かさでもあった。
— 国枝史郎 『喇嘛の行衛』 青空文庫
絶えず異族の侵略に暴露されて居る北人には、此の如き冷淡なる態度――旅舍の主人が行客を送迎するが如き――も亦、一つの必要なる處世法であつたかも知れぬ。
— 桑原隲藏 『歴史上より觀たる南支那の開發』 青空文庫