艶冶
えんや
名詞
標準
文例 · 用例
それ等は丸味を帯びた広い額の白毫の光に反映せられ、反つて艶冶を増す為めか、或ひはそれ等の部分部分にことさら丹念に女人の情を潜ませてあるのか、兎に角、彼は今まで如何なる名匠の美人画にも単なる艶冶や嬌態を示したものに、これほど心を引かれたことはなかつた。
— 岡本かの子 『老主の一時期』 青空文庫
清浄を湛へて艶冶ははじめてまことに生き、ます/\嬌色は深まるものであらうか――。
— 岡本かの子 『老主の一時期』 青空文庫
たゞ若さは、青春は、娘は、かくおのれを謎の地に伏せる間も、謎の地に伏せるほど身のうちをうす紅梅色に華やがし、醸し出す艶冶な電気は、相対の性に向って逸奔し度がって仕方がありません。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
富豪の家の次男にて艶冶無腸の若旦那なりき。
— 泉鏡花 『黒壁』 青空文庫
その前で例の春信型の線の細い輪郭の、例の顏容の女が盥で湯を使つてゐるのであるが、その線は寫實的であつたから不快ではなかつたが、ロダンやマネの素描の知的な冷たさに代へて、柔かく、唯單に肉體の輪郭を仕切るといふ必要以外の艶冶を見せようという作意の爲めに、全體がやや浮世繪的官能的になつたのはやむを得ない。
— 木下杢太郎 『京阪聞見録』 青空文庫
六 いかにも、あどけない少女らしく見えていて、男心を捕えるのに妙を得て、奔放自在、しかもどっかに才気の閃きを見せて艶冶である、こんな少女を、一体どこで見つけて来たのだろうと、前川は感嘆しながら、心の底まで楽しくなっていた。
— 菊池寛 『貞操問答』 青空文庫
とはいえ艶冶たる風貌は二十四、五にしか見えなかった。
— 国枝史郎 『八ヶ嶽の魔神』 青空文庫
見ればその背後に年は二十歳、あるいはそれよりも若いかも知れない、武家の娘と一眼見れば知れる、清麗ではあるが艶冶ではなく、若いに似合わず着けている物に、赤色などのきわめて乏しい、年を経たならば烈女ともなろうか、真面目そうな娘を連れていた。
— 国枝史郎 『血煙天明陣』 青空文庫