湧き上る
わきのぼる
動詞
標準
文例 · 用例
友あり、遠方より来る、というあの句が、おのずから胸中に湧き上る。
— 太宰治 『酒ぎらい』 青空文庫
たったいままで読んでいたという形のつもりかも知れないが、それもまた、あまりにきちんとひらかれて置かれているので、かえって彼が、その本を一ページも読まなかったのではなかろうかという失礼な疑念がおのずから湧き上るのを禁じ得なかったくらいであった。
— 太宰治 『母』 青空文庫
愛惜の気持ちが復一の胸に沁み渡ると、散りかかって来る花びらをせき留めるような余儀ない焦立ちと労りで真佐子をかたく抱きしめたい心がむらむらと湧き上るのだったが……。
— 岡本かの子 『金魚撩乱』 青空文庫
よくもまあ、おれの存在は器用に分裂したものだ」 もくもくの水の湧き上る渦の音を聞いて復一の孤独が一層批判の焦点を絞り縮めて来た。
— 岡本かの子 『金魚撩乱』 青空文庫
私はそれ等諸作の追憶から湧き上る氏への崇拝の心を籠めて、「とにかくお体を大切になさいまし。
— 岡本かの子 『鶴は病みき』 青空文庫
ほんとうの栄えは仏神を念じて、生命の底から湧き上る力を得てのちに得られるものだと信じます。
— 岡本かの子 『仏教人生読本』 青空文庫
彼は先客の人に対して議会解散の予想などを喋喋述べて居たが、「こんなへつぽこ役人ではね、」と云つて湧き上る様に笑つた。
— 平出修 『公判』 青空文庫
と申すのは、『これが女難だな』という恐ろしい考えが、次第次第にたかまってきて、今までお幸のもとに通ったことを思うと『しまった』という念が湧き上るのでございます。
— 国木田独歩 『女難』 青空文庫