東下
とうか
名詞
標準
文例 · 用例
日本の歴史の恐怖時代といふべき、平家の末路から、鎌倉の執権政治にかけて、悲壮なる運命劇は、何故か東海道の河畔で演ぜられたのが多い、承久の乱に鎌倉に囚はれて、東下りの路すがら、菊川の西岸に宿つて、末路の哀歌を障子に書きつけた中御門中納言宗行卿もさうである。
— 小島烏水 『天竜川』 青空文庫
草紙洗小町、雨乞小町などといふいはゆる七小町の類から六歌仙の一人としての歌仙小町、それから人生の栄枯盛衰にかけてあはれ深く説きなした玉造小町、業平東下りの条の髑髏の小町などまで、およそ絶世の美女の上に空想される詩的構想を、あらゆる角度から伝説は充たしてゐる。
— 岡本かの子 『小町の芍薬』 青空文庫
ここは重衡の東下りのとき、鎌倉で重衡に愛された遊女|千手の前の生れた手越の里だという。
— 岡本かの子 『東海道五十三次』 青空文庫
命に従わず朝を軽んずるというので、節刀を賜わって関白が愈々東下して北条氏を攻めるというのである。
— 幸田露伴 『蒲生氏郷』 青空文庫
三月は斎藤九郎兵衛が京都から浅野長政等の書を持って来て、いよいよ関東奥羽平定の大軍が東下する、北条征伐に従わるべきである、会期に違ってはなりませぬぞ、というのであった。
— 幸田露伴 『蒲生氏郷』 青空文庫
そこで九郎兵衛に返書を齎らさしめ、守屋|守柏、小関大学の二人を京へ遣ったが、政宗の此頃は去年大勝を得てから雄心|勃々で、秀吉東下の事さえ無ければ、無論常陸に佐竹を屠って、上野下野と次第に斬靡けようというのだから、北条征伐に狩出されるなどは面白くなかったに相違無い。
— 幸田露伴 『蒲生氏郷』 青空文庫
その方共は島津の太守の名を騙る東下りの河原者かッ」「なにッ、名を騙るとは何事じゃッ、何事じゃッ。
— 三河に現れた退屈男 『旗本退屈男 第五話』 青空文庫
此年多紀宗家では棠辺が和宮の東下を迎へまつらむがために京都に往つた。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫