巉岩
巉岩
名詞
標準
文例 · 用例
朱樺の火は燃え出した、その明るくなることは、花が発くのと同じで、万象の色が真の瞬間に改まる、槍と穂高と、兀々した巉岩が、先ず浄い天火に洗われて容を改めた、自分の踏んでいる脚の下の石楠花や偃松や、白樺の稚いのが、今眠から醒めたというように朝風に身振いしてソヨソヨと顫った、天地皆新しい。
— 小島烏水 『奥常念岳の絶巓に立つ記』 青空文庫
大同ダムで堰き止められて、本来の懸崖の三分の一以上、二百|仞も高く盛り上ったその水際には、すなわち現実における魚は緑樹の梢にのぼり巉岩は河底の暗処に没して幽明さらに分ちがたい。
— 北原白秋 『木曾川』 青空文庫
巉岩少しく凹む所樹木繁る中に一宇あるをみる。
— 長塚節 『草津行』 青空文庫
背後は嶮山左右は巉岩、そうして前は大海です。
— 国枝史郎 『赤格子九郎右衛門』 青空文庫
そこに峙っている鷲峰山は標高はようやく三千尺に過ぎないが、巉岩絶壁をもって削り立っているので、昔、役の小角が開創したといわれている近畿の霊場の一つである。
— 近松秋江 『狂乱』 青空文庫
海からあがった霧が巉岩に屍衣のようにぼんやりと纒いつき、黄昏のような色をした雪原の上に海鴨が喪章のように点々と散らばっている。
— 久生十蘭 『海豹島』 青空文庫
昨日で辟易した幔幕、またぞろ行く手を遮る、幕の内連が御幕の内にいるのは当然だ、と負け惜みをいいつつ、右に折れ、巉岩にて築き上げた怪峰二、三をすぎ、八時、標高三千十四米突の一峰に攀じて腰を据える。
— 鵜殿正雄 『穂高岳槍ヶ岳縦走記』 青空文庫
左折して、四十度以上の傾斜地を斜めに、西北にとり、低き山稜に出ると、巉岩や偃松で織りなされた美景が正面にくる。
— 鵜殿正雄 『穂高岳槍ヶ岳縦走記』 青空文庫