絽刺し
ろざし
名詞
標準
文例 · 用例
信子は気のない返事をしながら、夫の襟飾の絽刺しをしてゐた。
— 芥川龍之介 『秋』 青空文庫
姐さんが、絽刺したハンドバックを、赤珊瑚の帯留を、私の前に並べて、これは倉光さんからのものだと言いました。
— 豊島与志雄 『男ぎらい』 青空文庫
小綺麗なメリンスの掛蒲団をかけて置炬燵にあたりながら気慰みに絽刺しをしていたところと見えて、右手にそれを持っている。
— 近松秋江 『霜凍る宵』 青空文庫
ああして小綺麗なメリンス友禅の掛蒲団の置炬燵にあたりながら絽刺しをしていた容姿が、明瞭と眼の底にこびりついて、いつまでも離れない。
— 近松秋江 『霜凍る宵』 青空文庫
とにかく静かで、ただ絽刺しの針を運ぶ指先が動いているだけである。
— 近松秋江 『霜凍る宵』 青空文庫
」 そんな者が来ているなら、ああして自分独り黙って絽刺しをさしているはずもない、すると、あれは、これから自分の寝る床であろうか。
— 近松秋江 『霜凍る宵』 青空文庫
まったく私には思いもよらなかったことですが、あの方は御自分で実に上手にいろんな絽刺をされるんですからねえ!
— または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊 『死せる魂』 青空文庫
いつもより濃く化粧をし、髪のカールを一筋乱れぬまでに梳かしつけ、薄鼠色の地に水色の井桁を散らした薄物をきりっとまとい、一重帯の帯締の翡翠の彫物を正面から少しくずらし、畳表づきの草履を白足袋の先につきかけ、銀の太い握りの洋傘を絽刺のハンドバッグに持ち添えていました。
— ――近代説話―― 『白蛾』 青空文庫