敷妙
しきたえ
名詞
標準
文例 · 用例
いずれ、金目のものではあるまいけれども、紅糸で底を結えた手遊の猪口や、金米糖の壷一つも、馬で抱き、駕籠で抱えて、長い旅路を江戸から持って行ったと思えば、千代紙の小箱に入った南京砂も、雛の前では紅玉である、緑珠である、皆敷妙の玉である。
— 泉鏡花 『雛がたり』 青空文庫
空は晴れて、霞が渡って、黄金のような半輪の月が、薄りと、淡い紫の羅の樹立の影を、星を鏤めた大松明のごとく、電燈とともに水に投げて、風の余波は敷妙の銀の波。
— 泉鏡花 『妖術』 青空文庫
去年ちょうど今時分、秋のはじめが初産で、お浜といえば砂さえ、敷妙の一粒種。
— 泉鏡花 『海異記』 青空文庫
若い瞳がうち看守る八つの湖、春を敷妙の床の花原。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
漣の寄する渚に桜貝の敷妙も、雲高き夫人の御手の爪紅の影なるらむ。
— 泉鏡花 『一景話題』 青空文庫
ただ緋毛氈のかわりに、敷妙の錦である。
— 泉鏡花 『夫人利生記』 青空文庫
タマモ打麻乎 麻績王 白水郎有哉 射等籠荷四間乃 珠藻苅麻須空蝉之 命乎惜美 浪爾所湿 伊良虞能島之 玉藻苅食玉藻苅 奥敝波不榜 敷妙之 枕之辺 忘可禰津藻 タマモは玉藻あるいは珠藻でここは海藻を指し玉もしくは珠は藻の美称として付けたものである。
— 牧野富太郎 『植物記』 青空文庫
或は、『玉藻なす靡き吾が寝し敷妙の妹が袂を露霜の置きてし来れば』云々と詠んで居り、石見ではじめて情交をなした女の如くにも見えるし、或は同行したとも考へられるが、当時の官吏などは妻を連れて行かぬのが普通であつただらうか。
— 斎藤茂吉 『人麿の妻』 青空文庫