根掛け
ねがけ
名詞
標準
文例 · 用例
いつの間にかお辻が丹念に蓄へて置いた珊瑚の根掛けや珠珍の煙草入れ、大切に掛け惜んでゐた縞縮緬の丹前、娘達の別れがたみの人形、宗右衛門自身が江戸の或る大名家老から頂戴した羽二重の褥が紅白二枚、死出の旅路をひとりで辿るお辻の小さな足にも殊更に絹|足袋を作つて穿かせ、穿きかへまでも一足添へた。
— 岡本かの子 『老主の一時期』 青空文庫
白牡丹で買ったばかりの古渡りの珊瑚の根掛けや、堆朱の中挿しを、いつかけるような体になられることやらと、そんなことまで心細そうに言い出した。
— 徳田秋声 『足迹』 青空文庫
十八日の四谷の祭りには、女房お藤が親類に招かれて遊びに行くことになっていたので、以前まえからの約束もあり、今朝伊助は、貧しい中からいくらかの鳥目をお藤に持たせて、根掛けの板子縮緬を買いに亀安へ遣ったのだった。
— うし紅珊瑚 『早耳三次捕物聞書』 青空文庫
煎餅屋の女房が買物に来て、根掛けを選んでいるうちに、ふと見ると、今まで台の上にあったうし紅珊瑚が一つ足らなくなっている。
— うし紅珊瑚 『早耳三次捕物聞書』 青空文庫
ちょうど、このとき、一人の男が、飛び込んできて、「どれ、その根掛けというのは。
— 小川未明 『らんの花』 青空文庫
」と、老人は、そばにあった小箱のひきだしから、布に包んだ、青い石の根掛けを出して、男に渡しました。
— 小川未明 『らんの花』 青空文庫
しかも小さい丸髷に金無垢の簪根掛けをつけているのには、検屍の人たちも一驚した。
— 大鹿卓 『渡良瀬川』 青空文庫
屋台の組立て、屋根掛け、商品の陳列、点灯、――さうしてその軒並みのおひおひ整ふ時分には、とつぷりと日が暮れる、それをどこかの喫茶店の二階からでも見下ろしてゐる、薄暮から夜景に変るそんな時刻の推移には、何か不思議な情趣があつた。
— 三好達治 『銀座街頭』 青空文庫