実有
じつう
名詞
標準
文例 · 用例
そうして、喧しい饒舌や空しい多言は、幻影を実有のごとくに語るのである。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
然るに日本|支那等に於ける美術は、始めから全くかかる写実を無視し物それ自身が有する本質的なる実有相を、直ちに全体の意味として捉えてしまう。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
故に例えば東洋の絵は、竹を描いても虎を描いても、その植物や動物が持っているところの、真の実有相なる直情性や猛獣性やを、形以上のメタフィジックな本質から直観し、意味それ自体を直接に強調している。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
それは物の形体を見ずして本質を見、部分のデテールを描写しないで、直ちに物それ自体の実有相を表現する。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
しかしそういう事は事実有りうべき事だろうと思われる。
— 寺田寅彦 『解かれた象』 青空文庫
すでに一石橋当夜の紳士と、生理学教室における国手とが同一人である事を確めた上は、些少たりとも犯罪に対して何等その疑いは無いのでありますが、お話のごとき事が事実有り得るものかどうか、後学のため、一種人情に対する警官の経験の為に、云うて、その室で飾ると云われた、雛を見せて貰うたです。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
エレア哲学の実有論を噛み砕いて、拳を固めて吾と吾が胸を叩きながら絶対唯物論の橋を渡り、汎神の彼岸に身を翻さうといきまくスパルテストであつた。
— 牧野信一 『R漁場と都の酒場で』 青空文庫
私もその無礙の自由の世界を私の胸の内に実有することを最終の願望としてゐるものである。
— 倉田百三 『善くならうとする祈り』 青空文庫