影向
ようごう
名詞
標準
文例 · 用例
さりながら、縁日の神仏は、賽銭の降る中ならず、かかる処にこそ、影向して、露にな濡れそ、夜風に堪えよ、と母子の上に袖笠して、遠音に観世ものの囃子の声を打聞かせたまうらんよ。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
……と、場所がよくない、そこらの口の悪いのが、日光がえりを、美術の淵源地、荘厳の廚子から影向した、女菩薩とは心得ず、ただ雷の本場と心得、ごろごろさん、ごろさんと、以来かのおんなを渾名した。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫
鬼神力が三つ目小僧となり、大入道となるように、また観音力の微妙なる影向のあるを見ることを疑わぬ。
— 泉鏡花 『おばけずきのいわれ少々と処女作』 青空文庫
さて、打咳き、「トこの天窓の上へ、艶麗に立たれた時は、余り美麗で、神々しくッて、そこいらのものの精霊が、影向したかと思いましたて。
— 泉鏡花 『式部小路』 青空文庫
かねて信心渇仰の大、大師、弘法様が幻に影向あった。
— 泉鏡花 『雪柳』 青空文庫
普賢も影向ましますか。
— 泉鏡太郎 『露宿』 青空文庫
又市中|影向石といふものあり。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
石棺の露出せる處に、里見廣次の墓と題する石塔を訪ひ、總寧寺の境内を過ぎ、右に兵營、左に練兵場を見て、國府臺を下り、市川の村はづれより市川橋を渡り、小岩驛より汽車に乘りて歸ることとしけるが、日なほ高ければ、小利根川の右岸を下ること凡そ十町、善養寺一名小岩不動に立寄りて、星下松を仰ぎ、影向松を撫す。
— 大町桂月 『川魚料理』 青空文庫