躡
躡
名詞
標準
文例 · 用例
幼年から数奇な運命は彼の本来の性質の真情を求めるこころを曲げゆがめ、神秘的な美欲や愛欲や智識欲の追躡といふやうな方面へ、彼の強鞣な精神力を追ひ込み、その推進力によつて知らぬ間に、彼の和漢の学に対する蘊蓄は深められてゐた。
— 岡本かの子 『上田秋成の晩年』 青空文庫
人間の廃朽品である乞食に就ても同様で、一たんこれと目ざした乞食に向けては執拗に詮索を追躡して行く性分である。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
盛庸と鉄鉉とは兵を率いて其後を躡み、東昌に営したり。
— 幸田露伴 『運命』 青空文庫
帝|大理少卿薛」]を遣りて、燕王及び諸将士の罪を赦して、本国に帰らしむることを詔し、燕軍を散ぜしめて、而して大軍を以て其後に躡かしめんとす。
— 幸田露伴 『運命』 青空文庫
四年正月、燕の先鋒李遠、徳州の裨将葛進を上を攻め、沛県を攻めて之を略し、遂に徐州に進み、城兵を威して敢て出でざらしめて南行し、三月|宿州に至り、平安が馬歩兵四万を率いて追躡せるをを執って燕王に逼る、相距るたゞ十歩ばかり、童信射って、其馬に中つ。
— 幸田露伴 『運命』 青空文庫
我好古の眼もて視るときは、是れ猶|古のリリス河にして、其水は蘆荻叢間の黄濁流をなし、敗將マリウスが殘忍なるズルラに追躡せられて身を此岸に濳めしも、昨の猶くぞおもはるゝ。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
あの男はとうとう追躡妄想で自殺してしまった。
— 森鴎外 『沈黙の塔』 青空文庫
眼とすれすれに機躡が忙しく上下往來するのをじつと瞬かずに見詰めてゐようといふ工夫である。
— 中島敦 『名人傳』 青空文庫