頻波
しきなみ
名詞
標準
文例 · 用例
ああ舟にのりて行かば、くるほしきなみの亂れもここちよく、ちのみごの夜びえする、あやしきこゑもきかであるべきに、ふるとせひとにかくれて、わがはぐくみしいろぐさのはや涸れぬとぞ、けふきけば薄葉に涙しをるる、よしゑやし、悲しきものはあだがたき、君ならなくに、はやも我が世をのがれいでばや。
— 萩原朔太郎 『浮名』 青空文庫
あまつさえ、目に爽かな、敷波の松、白妙の渚どころか、一毛の青いものさえない。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫
眉白き船頭の漕ぐにまかせ、蒔繪の調度に、待乳山の影を籠めて、三日月を載せたる風情、敷波の花の色、龍の都に行く如し。
— 泉鏡太郎 『婦人十一題』 青空文庫
今夜はよその家にはいるのが得策だと心であせったが、どういうものかそれができないで、まずいことだとは知りながら、彼はひとりでにガンベに誘いこまれた敷波楼の暖簾を飛びこむようにして潜った。
— 有島武郎 『星座』 青空文庫
将士二千、見わたす限りの地に、あぐらして、敷波に坐っていた。
— 世の辻の帖 『私本太平記』 青空文庫
御車寄の階下には、その足利家の高ノ師直、また、近衛の武将新田義貞、名和長年など、天皇のお目からみると、どれも御し難い面だましいが、敷波に充満していた。
— 建武らくがき帖 『私本太平記』 青空文庫
はやくも大船の胴ノ間では、むしろを清めて、尊氏が座をただして御使を待ち、直義とほかの諸将も艫へかけて身を一様な敷波にして平伏していた。
— 風花帖 『私本太平記』 青空文庫
はじめは、数名の嗚咽だったが、しだいに、廊の左右から階の下にまで、敷波にヒレ伏していた公卿や舎人にいたるまでの、すべての人影の咽び声になっていた。
— 湊川帖 『私本太平記』 青空文庫