燎
にわび
名詞
標準
文例 · 用例
……情流既に枯渇して、今はただ金慾、野を燎く髯だからね。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
小初は腰の左手を上へ挙げて、額に翳している右の腕に添え、眩しくないよう眼庇しを深くして、今更のように文化の燎原に立ち昇る晩夏の陽炎を見入って、深い溜息をした。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
けれども今まのあたりに見るやうな、さはつたら何ものをでも燎爛さずには置くまいとする力の籠つた女の姿は初めてであつたのである。
— 平出修 『瘢痕』 青空文庫
実際そんな単純な考えが熱狂的な少数の人の口から群集の間に燎原の火のようにひろがって、「芝」を根もとまで焼き払おうとした例が西洋の歴史などにないでもなかった。
— 寺田寅彦 『芝刈り』 青空文庫
もしも国民の大多数の尊敬しあるいは憎悪するような人が死にでもすればそのうわさは口から口へいわゆる燎原の火のように伝えられるものである。
— 寺田寅彦 『一つの思考実験』 青空文庫
立上りはしないで、傘なりに少し屈腰になって、その白い手で、トンと敲いたと思うと、蘭燈といいますか、かさなり咲いた芍薬の花に、電燈を包んだような光明がさして、金襴の衾、錦の褥、珊瑚の枕、瑠璃の床、瑪瑙の柱、螺鈿の衣桁が燎爛と輝いた。
— 泉鏡花 『雪柳』 青空文庫
諸王は国中に臨きて、京に至るを得る無かれ、と云えるは、蓋し其意諸王其の封を去りて京に至らば、前代の遺※、辺土の黠豪等、或は虚に乗じて事を挙ぐるあらば、星火も延焼して、燎原の勢を成すに至らんことを虞るるに似たり。
— 幸田露伴 『運命』 青空文庫
燎原の勢、八ヶ国は瞬間にして馬蹄の下になつてしまつた。
— 幸田露伴 『平将門』 青空文庫